トップページ
医療大麻裁判とは
いきさつ
裁判経過
資料集
マスコミ
掲示板
裁判経過


被告人陳述

(はじめに)
今回、私は中島らも氏が大麻を入手するのを幇助したという罪状で起訴されました。しかし私は無罪だと確信しておりますし、関連して逮捕された桂川氏、中島氏もこの件に関しては無罪であるべきと考えております。それは大麻取締法が第4条で「大麻から製造された医薬品を施用し、または施用のため交付すること」と「大麻から製造された医薬品の施用を受けること」を例外なしに禁止することで、国民の幸福追求権と生存権を保障した憲法に違反しているからです。
今回の事件に関連した私、中島らも氏、桂川直文氏の3人がそろって証言していますように、今回の大麻譲渡は、中島らも氏の緑内障治療という医療目的から行われたものです。緑内障には決定的な治療法がなく失明率も高いこと、そして大麻が眼圧を最大25%下げるなど緑内障の治療に効果があることは、国連(WHO)報告や欧米の医療大麻研究ではよく知られている事実です。国連は緑内障治療のための大麻の可能性について、今後も研究を継続すべきだという見解を明らかにしており、緑内障患者の多い我が国においても、当然、研究が期待されるところです。

(厚生省の医療大麻規制には根拠がない)
1976年の厚生省発行の小冊子「大麻」によれば、大麻は戦前から医薬品として使用され、日本薬局方で「印度大麻草」「印度大麻草エキス」「印度大麻チンキ」が鎮痛、鎮静、催眠剤などとして収載され、1951年の第五改正日本薬局方まで収載されていたと書かれています。同小冊子によれば、「実際にはあまり使用されず、第六改正日本薬局方において削除され、それ以後、収載されていない」となっています。しかし、仮に、実際にあまり使用されていなかったのが事実としても、それをもって大麻の医療使用を懲役刑でもって禁止する根拠とならないのは明らかです。
また、この小冊子には、1900年代初めごろから、大麻を含む麻薬・向精神薬に関する国際条約が何度か締結され、我が国もそれらを批准してきたと書かれています。1961年に締結された「麻薬に関する単一条約」では「医療目的への使用までは禁止しなかったものの、ヘロインと同等の厳しい国際統制下に置くことにした」となっています。しかしいずれの国際条約も、医療目的の使用禁止までは求めておりません。実際、これら条約の批准国であるアメリカの薬物規制法においても、大麻は厳しく規制されてはいるものの、医療試験などの研究には使用の道が開かれており、1980年代には、患者を対象に臨床試験が実施されています。イギリスでも同様に、人間を対象とした臨床試験が行われており、研究成果が報告されています。
つまり、厚生省の見解であるこの小冊子のどこをみても、大麻の医療使用を例外なしに禁止する合理的な理由はありません。

(医療用大麻禁止のいきさつ)
大麻は1948年に制定された大麻取締法により、医療使用が禁止されました。当時、軍事占領下にあった日本政府に対して、アメリカ占領軍は大麻栽培の全面禁止を要求してきました。国会議事録によれば、当時の農林水産省は、我が国の主要農産物であった大麻栽培を、免許制を導入することで、全面禁止の要求から守ろうとしました。一方、厚生省はアメリカ軍の大麻禁止の理由が大麻に含まれる麻薬成分だと知り、大麻からの医薬品の製造および使用を、例外なしに禁止しました。国会議事録によれば、大麻の麻薬性、危険性、あるいは医薬品としての効果の有無などについて、ほとんど審議されていないばかりか、麻薬性があると聞いて、何かの間違いではないかと思ったと、当時の担当者が証言しています。大麻の農産物としての栽培認可という目的のために、医療用途を犠牲にしたか、あるいは当時の厚生省関係者は、大麻の医療使用に関心が薄かったものと思われます。つまり、1948年の大麻の医療使用禁止は、科学・医学に基づいた根拠があったわけではなく、したがって1976年の厚生省の小冊子にも、禁止の理由が明示されていないのもうなづけます。

(大麻の危険性)
大麻取締法は国民の健康を守るという理由でもって、有害性の高いとされる大麻を規制し、その違反者を懲役刑に処してきました。しかし、前述の厚生省発行の小冊子「大麻」によれば、有害性の根拠は、ほとんどが外国の研究論文によるものであり、あとは僅かにネズミなどを使用した動物実験による毒性を証明するための試験以外にありません。違反者を逮捕投獄する以上、我が国としては、大麻の有害性について、外国の資料にのみ依拠することなく、しかも動物ではなく人間を対象とした科学的・医学的な独自の調査をしなければなりません。しかし、大麻取締法は第4条でもって、「何人も大麻から製造された医薬品を処方してはならないし、処方されてもならない」と規定しているため、有害性についても、あるいは医薬品としての可能性についても、臨床試験で科学的・医学的に確認することができず、その努力も怠ってきました。
一方、大麻の有害性については、国連(WHO)もこの30年間で大きな変化があったと認めているように、これまで言われてきたような強い依存性も耐性の上昇もなく、アルコールやタバコほどの致死量がないことも確認されています。

(大麻の医療価値の再認識)
1980年代になって、それまでまったくないとされてきた大麻の医療価値が再認識され始めました。1971年には医療価値について否定的(THE USE OF CANNABIS , REPORT OF A WHO SCIENTIFIC GROUP)だった国連WHOは、1997年には医療大麻の研究を続けるべきである(CANNNABIS : A HEALTHE PERSPECTIVE AND RESEARCH AGENDA)と発表し、アメリカにおいても、1999年、国立医薬研究所が2年間の研究結果をまとめたIOMレポートを公表し、医療大麻の研究の必要性を明らかにしました。またイギリスでは政府による数千人を対象にした臨床試験が行われました。
大麻の医療価値の再認識は、1990年代に脳内カンナビノイド受容体と、内因性リガンドが発見され、加速されました。この発見により、大麻の薬理作用がモルヒネと同様の作用機序をもつことが解明され、新しい医薬品の製造に大きな可能性が開かれました。

(海外における医療大麻)
医療大麻の価値が再認識されたことにより、欧米では医療目的の大麻の使用が始まり、医薬品の開発も始まりました。アメリカではカリフォルニア州をはじめ、8州で末期ガンの鎮痛、エイズ患者の食欲増進などのための使用が合法化され、カナダでは政府が民間に大麻栽培を委託し、必要な患者に支給することも可能になりました。オランダでは医師の処方箋にもとづき、一般の薬局で医療用の大麻が購入できるようになり、ベルギーも同様の政策をとるとされています。
イギリスでは今年1月29日、大麻がカテゴリーBからCに移行され、少量の所持が逮捕の対象とならなくなり、それにともなって医療使用にも大きく道が開かれました。イギリスではGW製薬が大麻から抽出した鎮痛剤を開発し、近く、バイエル社が販売を開始する計画があります。
一方、我が国においては旧態依然とした大麻取締法があるため、医療研究すらままならず、大麻による治療の可能性がまったく閉ざされているばかりでなく、創薬においても欧米に大きく遅れをとっているのが実情です。これは国民の健康を守ることを目的とする大麻取締法の精神にも反することであり、また、国際競争の激しい医薬製造業界にとっても大きな損失であることは言うまでもありません。

(日本の医療大麻研究)
欧米先進国における医療大麻の実例と可能性に関する情報を得て、日本でもようやく医療大麻の研究が始まりつつあります。来る3月7日には日本薬理学会が開催され、医療大麻の可能性について5人の学者・研究者の発表が行われます。これまで毒性と有害性の研究に比重が置かれていた日本の大麻研究も、医薬品の可能性という観点から科学的・医学的な研究が進められることになりますが、ここでも、大麻取締法第4条により、臨床試験ができないという点が問題となっています。医薬品の開発と製造には臨床試験が必須ですが、現在の大麻取締法はそれを不可能にし、創薬の可能性を閉ざすものでしかありません。

(ほかに効果のある医薬品があるはず?)
大麻ではなくてもほかに効果のある薬があるのではないか、という疑問が一般的に言われます。もちろん大麻以外にも効果のある医薬品はたくさんあります。難病といわれる多発性硬化症のような治療の困難な病気にも、ステロイドなどの医薬品がないわけではありません。ただ、効果が限定的だったり、副作用が強いなどの限界があり、大麻による治療に望みがかけられています。
また例えば末期がんの痛みについては、場合によってはモルヒネ以上の鎮痛効果があり、モルヒネとの併用でさらに効果が増すことも報告されています。特に神経系の疼痛については、ほかの鎮痛剤より高い効果が確認されています。大麻はほかの医薬品と比較しても、毒性および副作用に関して安全性が高いという報告があります。
大麻製剤により、治療の可能性が拡がるなら、使用してはならない理由はありません。医療大麻は医薬品と治療方法の選択肢を広げ、病人の治療の可能性を広げます。本件の中島らも氏の緑内障治療についても、治療の選択肢のひとつとして合法的に選択できる道があれば、当然のことながら逮捕には至らなかったのです。
また大麻から製造された医薬品ではなく、化学合成されたTHC(大麻の活性成分)を使用すれば十分だという主張もありますが、大麻の活性成分は300種を超え、そのすべてを化学合成することはできません。また、医薬品の製造および利用にあたり、活性成分の抽出あるいは含有植物そのものの使用を非合法とするのは、まったく合理性がありません。

(大麻の精神薬理作用と医療使用)
最近の判例では、大麻に「思考分裂、時間・空間感覚の錯誤、離人体験等をもたらし、長期の常用により、無気力・無感動を呈し、判断力・集中力・記憶力の低下をもたらすなど一定の精神薬理作用がある」ことをもって大麻規制が合理的であるとされることが多い。しかし、これらの精神作用はアルコールの酩酊でも見られるものであり、薬理作用が消滅したあとも、このような症状が残ることはまずありません。また大麻に精神薬理作用があるからという理由で、大麻の医療使用を禁止するのは不合理です。なぜなら、その精神薬理作用を医療目的に利用することも可能だからです。最近の研究では、大麻による依存性薬物からの脱却、鬱病、不安、睡眠障害、神経性食欲不振、精神的障害などにも効果があることが研究されています。大麻の精神作用が不快であれば、患者はほかの医薬品を選択することもできますし、アメリカの医薬研究所では、大麻のいわゆる多幸感が患者の病気回復に与える好影響について、さらに研究を続けるべきだという結論を出しているほどで、精神薬理作用があるからという理由でもって、医療使用を禁止することには合理性がありません。本件で逮捕された中島氏も、「大麻を喫煙して、病気と闘う気持ちがでてきた」と証言しています。もし、仮に長期の常用が有害だとしても、医療目的で医師の管理のもとで使用する場合には、使用期間の管理がなされるはずで、問題にはならないと言えます。

(最後に)
以上、医療大麻の禁止には合理的な根拠がないこと、大麻の有害性についての認識が変化してきたこと、欧米先進国で大麻に医療価値があることが再認識され、医療使用と医薬品開発がすすんできたこと、日本でも大麻製剤の輸入・開発・臨床が必要であるにもかかわらず、大麻取締法がそれらを阻んでおり、健康を求める国民の利益に反していることについて述べてきました。
病気で苦しむ人たちには、効果の可能性のある医薬品を試す権利があるはずです。患者さんと家族の方たちの、健康を取り戻したいという切実な声に真摯に耳を傾け、厚生労働省が一刻もはやく、医療大麻研究に道を開き、医療関係者がその有効性を研究することができるよう、法改正を含めた法的措置をとることを心から要望します。
裁判官には大麻取締法の問題点をご理解いただき、病気に苦しむ人たちの救済につながるような判決をお願いしたいと思います。

戻る