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提言・医療大麻の使用を認めるべき

有害性の実証なく根拠薄い大麻規制論医療的価値を見直し合法化への道開け

最近の海外における研究により、大麻の医学的価値が判明しているが、日本では1948年の大麻取締法施行以降、その使用は禁止されている。大麻に対する偏見や不安を解き、医療での使用解禁を訴える。

ここ数年、欧米で大麻(マリファナ)の医療使用合法化の動きに、加速がついてきた。もっとも新しいところでは、この七月、カナダで末期がん患者の苦痛緩和を主な目的として、大麻の栽培と使用が解禁された。公費助成も制度化され、政府公認のマリファナ栽培農場も整備される。

これに先立ち、アメリカでは1996年、カリフォルニァ州とアリゾナ州で、現在では10州以上で、住民投票などにより、大麻の医療使用が合法化されている。この5月、アメリカ連邦最高裁が、医療であっても大麻の使用は違法との判断を下したにもかかわらず、6月にはネバダ州で、医療大麻使用を認める法案が通過、その数はさらに増加する方向にある。

この大麻は、新聞などで乱用薬物として取りざたされているマリファナと同一のものである。植物学的にはカンナビス(cannabis)と呼ばれるが、医療目的で使用する場合を便宜上、医療大麻(Medical Marijuana)と呼んでいる。

モルヒネの使用に限界を認める医師も

大麻が医療用として合法化されている国においても、使用にあたっては医師の診断が必要となる。現在のところ、効果があると認定されているのは、末期がんの疼痛、がんの化学療法による吐き気、エイズなど消耗性疾患の食欲増進、事故の後遺症やリウマチなどの慢性痛、偏頭痛、緑内障、対麻痺と四肢麻痺などである。なかでも、わが国で神経性難病に指定されている多発性硬化症には著効があるとされている。そのほか、経験上ではうつ病や癲癇、睡眠障害、掻痒症、喘息などにも効果があるということで、今後の研究課題となっている。

多くの患者、特に末期がんの患者と家族にとって、最大の関心事は疼痛による苦しみだろう。最近、厚生労働省がモルヒネの使用を進めており、一定の効果を上げているのは事実だが、アヘン剤には強い肉体的依存性と耐性の上昇があり、限界を認める医師も多い。アヘン剤が鎮痛に効果があるのは、脳内にアヘン剤に対するレセプターがあるからだが、大麻の主要成分であるTHC(テトラ・ヒドロ・カンナビノール)にも、同様のレセプターがあることが分かっている。アイオワ大学臨床研究所における研究では、未期がん患者三六人の疼痛緩和に用いたところ、経口投与されたTHC 5〜60mgは60mgのコデインにほぼ匹敵することが明らかになっている(Marijuana Medical Handbook : Tod Mikuriya MD)。

欧米で進む研究ベルリンで国際会議開催

アメリカでは政府から研究資金を得た米科学アカデミー(Institute Of Medicine)が、1999年3月17日、大麻の医療擾鶏緯関瀞るレポート(IOM Report)を発表した。痛みの軽減、吐き気や嘔吐の緩和、食欲増進のための治療薬として有効であり、さらなる研究の必要性を認めている。これに伴い5月には、アメリカ政府は医療研究用の大麻販売ガイドラインを発表した。また鎮痛用に開発されたカンナビス・パッチには、特許が与えられた。

イギリスでは国会上院の科学技術小委員会が98年11月、「大麻に関する科学的・医療的証拠」という300頁に及ぶ報告書を政府に提出し、研究と法改正の必要を訴えた。英国医師会は医療大麻合法化に積極的で、英国GW製薬では、薬品の研究開発に取りかかっている。

この9月には、ドイツのベルリンで医療大麻の国際会議が開催され、欧米の参加者から多くの研究発表が行われた。オランダでは2年がかりで2000人の多発性硬化症の患者を対象に、臨床試験が進められている。フィンランドでは緑内障治療薬が開発中である。

ところで、この大麻だが、中国や日本でも古くから医薬品として使用されてきた。神農本草経や本草綱目には、大麻の葉や若い果穂に、リウマチ、関節痛、筋肉痛、神経痛などの痛みを軽減し、喘息を治し、安眠させる効果があるとして処方が詳述されている。日本の民間薬書にも鎮痛・鎮痙・安眠・食欲増進の処方があり、実際、喘息の特効薬として、タバコ状の乾燥大麻が薬局で店頭販売されていたこともある。最近の西洋医学による大麻の見直しは、東洋の処方の再確認といっても過言ではないだろう。

治験すらできない現状は国益を損ねかねない

日本で大麻取締法が施行されたのは1948年である。それまで主要農産物の1つとして、衣服、食糧、建材、紙、飼料、薬品などとして、日本人の生活に深くかかわりを持ってきた大麻は、免許制のもと、厳しく管理されることになった。

大麻が規制された経緯だが、当時、日本には大麻喫煙の習慣や、それによる病気・事故がまったくなかったこと、そして厚生省が当時も、そして現在に至るまで、大麻の有害性について、薬学的研究と調査を行った事実がないことをみても、その規制には占領国アメリカの意向があったものと推察される。

大麻には言われているほどの有害性がないことは、欧米医学書の権威であるメルクマニュアルや、アメリカの科学アカデミーも認めている。わが国の厚生労働省も、依存性と耐性上昇がアルコールやニコチンより低いことを確認している。また致死量がないことから、毒性も低いと考えられる。

この10月、イギリス政府は大麻規制をステロイドや抗うつ剤レベルに緩和し、少量の所持は実質的に逮捕・起訴せず、さらに医療研究を促進するよう法的措置を決めた。ドイツでは最高裁が少量の所持を処罰するに値しないとの判断を下した。その背景には、大麻には言われているほどの害がないという認識があるといえるだろう。

ところが、日本における大麻へのイメージは偏見に満ちたままだ。大麻取締法第四条では次の二つを禁止している。

○大麻から製造された医薬品を施用し、または施用のために交付すること
○大麻から製造された医薬品の施用を受けること

これに違反すれば医師は医師免許を剥奪され、患者も同様に5年の懲役刑に服さねばならない。医師は麻薬免許により、モルヒネやコカインを患者に施用できる。

しかし、大麻に関しては施用された患者が処罰されるため、臨床試験すらできないのである。効果と副作用が確定されていない未承認薬でも、医師は患者の同意があれば、治検薬として使用することができるにもかかわらず、大麻にはそのような道がないばかりか、例外なく懲役刑が待ち受けている。

この大麻に対する異常に厳しい規制により、日本では実際的な研究がほとんど絶望的な状況であり、患者はもちろん、医療関係者、製薬会社にとっても、大きな障害となっているのは間違いない。欧米で臨床試験が進み、新薬の開発が進んでいる状況で、日本のこのような厳しい規制は国益に反するものだとすらいえるのではないか。

有害で危険かどうか行政と医師で調査すべき

残念ながら、日本の医療関係者の多くは、大麻に対する先入観と偏見から自由だとは言えない。しかし、患者には効果があると思われる薬を試す権利があるはずである。それが有害で危険なものであるかどうかは、医師と行政が研究調査すべきであって、やみくもに懲役刑でもって規制すべきものではない。

ある多発性硬化症の患者(37歳)は、海外で大麻による治療を受け、大きな効果を実感したと報告している。また、偏頭痛と癒痴をもつ女性24歳)は大麻喫煙により症状の緩和を経験しているし、ある女性(70歳)はインターフェロンによる肝炎治療に伴う、うつ病の改善と食欲増進を報告している。彼らは病気治療のために使用しているのであって、決して嗜好品として扱っているのではない。しかしながら、白分たちの病気を治療する薬を、こそこそと隠れて使用しなくてはならないし、医師との連携治療もできない。

医療関係者がもっと自由に研究でき、末期がんの痛みなど、現状では十分な治療が難しいとされている患者に使用の道を開くことができるよう、法的な見直しをする時期にきていると思われる。 (執筆:前田耕一)

●まえだ・こういち
1975年、大阪外国語大学朝鮮語学科卒業。80年、サウジアラビア王立リヤド大学留学。
高校教員、大学講師、ジャーナリストなどを経てヘンプ・レストラン麻、他を経営。
訳著書『マリファナ青春旅行』(幻冬舎文庫)、『クルド民族』(亜紀書房)ほか。
患者・家族、市民とともに医療大麻合法化をめざす「医療大麻を考える会」(1999年設立、URL: http://www.iryotaima.org/)会員。